「くっそー!!」
逆上した犯人は、拳銃を何発か発砲する。
レストランの中は、大騒ぎだ。
しかも、その1発が私の居る壁に当たった。
ひぃぃっ……!?と思わず悲鳴をあげた。
前に出ていたら当たっていたかもしれない。
すると鬼龍院さんは、いつの間にか持っていたナイフを投げて拳銃の持っていた右手に刺した。
もう1人の犯人は、待機していたヤクザの部下が取り押さえていた。それだけではない。
鬼龍院さんは、凄い勢いで犯人に向かうと身体を回転させて回し蹴りをした。
人質の女性は、よろめいて座り込んでしまった。
犯人は、蹴り飛ばされて倒れてしまう。
あっという間の出来事だった。
周りは、何が起きたのかと分からず唖然としていた。
「鬼龍院さん……」
私も恐怖と驚きで唖然としまう。こんなことって……。
しかし鬼龍院さんは、倒れてもがいている犯人の前に立つとさらに踏みつけた。
それは、もう容赦なく……。
「答えろ。誰から教えられた?」
「ぐわっ……」
「ひ、卑怯だぞ!!
ヤクザが何をしても許されるのか!?」
もう1人の犯人がそう叫んだ。
周りは、さらにざわつきパニックになっていた。
だが鬼龍院さんは、顔色を1つ変えない。
いや……むしろ雰囲気は、氷のように冷たかった。
「それをお前達に答える必要性はない」
その表情は、私の知っている鬼龍院さんとは、ほど遠く別人のようだった。
いや……むしろゾッとするぐらいに怖い。
「サツが来る前にコイツらを連れて行け。
死なない程度に全て吐かせろ!」
護衛に来ていた部下達は、犯人の2人を連れて行った。
静まり返るレストラン内。
鬼龍院さんは、背広のポケットから黒いカードを取り出した。
そしてウェイターに差し出した。