「お待たせしました……」

 案の定予想通りだった。
現れた鬼龍院さんは、黒いスーツに黒いベストとワイシャツ。ヒョウ柄のネクタイだった。

 その姿は、クールな印象と若頭の風格があり独特なオーラを漂わしていた。
 周りには、護衛のヤクザが何人も居た。
怖いというか……凄い迫力だと思った。
 まるで別世界の人物に出会ってしまったようで近寄りがたい雰囲気があった。

「鬼龍院さん……」

 私がそう呼ぶと鬼龍院さんは、それに反応するようにふわっと柔らかい表情で微笑んできた。
 「今日は、来てくれて嬉しいです」と言いながら

 クールな雰囲気から、いきなり天使の微笑みを見せるからその破壊力は、半端ない。
 心臓を貫きダメージは、デカい。鼻血が出そうだ。
周りを見ると同じだったらしく、鼻を押さえてよろめく女性が続出。
 あっ男性までもが被害に……。

「どうかしましたか?上紗さん?」

「あ、いえ……何もありません」

 鬼龍院さん……不意討ちはやめてください。周りにも被害が及ぶので……。
 それに無駄にキラキラしています。

このままだといけないわ。
 私は、それ以上被害が及ばないように最上階のレストランに向かうことにした。
 エレベーターに乗り込むと鬼龍院さんは、こちらをチラチラと見ていた。

「どうかなさいましたか?」

 私は、不思議に思い尋ねてみると鬼龍院さんは、ハッとしたのか頬を赤く染めてきた。
 そして横を向いてしまった。

「す、すみません……。
上紗さんの今日の服装があまりにも大人の女性みたいで素敵だったので……つい」

えっ……!?
 鬼龍院さんの思わない言葉に胸がキュンと高鳴った。
褒められてしまった……。
 ドキドキと心臓が高鳴っているとエレベーターのドアが開いてしまった。

 すると恥ずかしかったのか鬼龍院さんは、早々とエレベーターから降りてしまう。
 ドアは、部下の人が開けておいてくれた。