「私と家内は、教師になることに反対していたんですよ。
私の会社に入れと言ったのですが、どーしても教師になるんだと聞かなくて。本当に困ったもので……。
でもそちらに嫁がせるなら、辞めさせてもいいと思いまして……」
はぁっー!?
ちょっとお父様。何勝手に仕事を辞めさせようとしているのよ?私は、辞めないわよ!
好きで教師の道を選んだのに。
それに今時共働きなんて珍しくもないし……。
「ちょっと……あのね……」
「……そうですか。いいのではないですか?
教師の道を選ぶなんて素晴らしいことだ。
結婚してから続けてもらっても俺は、全然構いませんよ」
えっ……?
驚いて鬼龍院さんを見ると彼は、クスッと笑った。
まるで、辞める気はないと分かっていたかのように余裕で微笑んでいた。
「でも……そうしたら……」
私は、彼の言葉に驚いた。まさか反対されないなんて……。
あなたが困るのじゃないの?
だって、ヤクザの妻が教師だなんて聞いたことがないし。
「俺は、夢を追っている君を全力でサポートしたいと思っている。
君が教師を続けたいの言うのなら僕は反対しない」
僕……?いや、でも。それでいいのだろうか?
教師よ?教師……。
あなたとは、違う世界なのに。
「あの……困らないのですか?
教師とヤクザなんて……正反対ではないですか」
自分でも言うのも変だが、確かに正反対の世界に住んでいる。
教師にとったらヤクザなんて不良よりたちの悪い天敵だし……。
出来るものなら関わりたくない人達だ。
「ぼ……俺は、職業で人を差別したりしない。
そして妻になる人が仕事で教師を続けたいと言うのなら縛る気なんてないよ。
こちらのことが嫌なら隠しても構わないし。
ヤクザと教師なんて反対な社会だが、それと結婚は別だ。
君のやりたいようにやればいい」
鬼龍院さんがそう言ってくれた。
私は、驚いて目を丸くした。
私は、てっきり反対されると思っていた。
それどころか、かなり物分かりのいい人だった。
普通ならそうはいかないはずだ。