「ヤクザが他に違うって何があるのよ?
ヤクザは、ヤクザでしょ!?
お父様は、娘に極道の妻になれて言うの?そんなのあんまりだわ」
いくら何でも極道の妻とか冗談じゃない!!
私は、教師として真っ当な人生を歩んでいるのに、それが極道の妻って……生徒に示しがつかないじゃない。
大体何処に娘をそんな危ない世界に引き込む父親が居るって言うのよ?最低だわ。
しかし信じられないと思っている時だった。
「随分と威勢のいい娘さんですね?
これは、いい奥さんになりそうだ」
えっ……?
振り向くといつの間にか、そのお見合い相手の男性がそばに来ていた。
多分大声を出したから気づいてしまったのだろう。
どうしよう……。
私は、思わず後退りする。
その男性は、近くで見ると確かにドストライクの綺麗な顔立ちをしていた。
だが写真で見るより迫力があった。黒いオーラというのだろうか?
黒いスーツだからなのか、いかにもヤクザの若頭みたいだった。
「これは、失礼しました。娘の上紗です。
ほら、上紗も挨拶をして……」
お父様は、必死にペコペコしながら私に挨拶するように言ってきた。はぁっ!?何で私が?
そう思ったがお父様の面目のために私も渋々頭を下げた。
本当は、やりたくないが……。
「はじめまして。椎名上紗と申します」
「こちらこそ。俺は、鬼龍院葵と言います。
今日は、俺のために来てくれてありがとう」
静かに微笑む彼は、クールで優しい感じだった。
微かに胸がキュンとなった。カッコいい……。
そしてレストランの特別席に移動することになり、お互いに向かい合って座った。
改めて向かい合って座ると何だか緊張してきた。
白ワインと料理を頼む。
そしてウェイターが持ってきた白いワインで乾杯する。
「今日は、お見合いってことになっているが初めての顔合わせだ。
まずお互いのことを知っておきたい。
君は、確か高校教師をしているんだって?」
「あ、はい。私立の高校で英語教師を……」
だからヤクザの人とお見合いできないのよ。
教師としての立場があるから……。
するとそれを聞いたお父様は、慌てながら弁解を始めた。