その後。観覧車から降りると私は、鬼龍院さんの車で家まで送ってもらった。

「今日は、ありがとうございました」

「いや……こちらこそありがとう。
それに……観覧車の時は、ごめん」

 恥ずかしそうに頬を染めて謝ってくる鬼龍院さんにクスッと笑みがこぼれてしまった。
 そんな私を見て鬼龍院さんは、ふわって微笑んできた。
 その笑顔にまたドキッとさせられた。

「今度は、もっと上手くやるから。
デート……楽しみにしている」

 それだけ言うと鬼龍院さんは、車に乗り込んでしまった。
車は、そのまま行ってしまう。
 去り際まで天使であり紳士的だった。
 もっと怖い人や嫌味な人だったら断る決断もすぐに出来たのに……それが出来ないでいた。

 それどころか、次の約束をするなんて……。
本当に何をやっているのかしら……私は。
 ハァッ……とまた深いため息を吐いた。
そして自宅の中に入って行くのだった。

 そして次の日。
早めに学校に行くとそのことを奈緒に話した。
奈緒は、すぐに食いついてきた。

「ちょっと、ちょっと……何よそれ!?
驚きよりも面白い展開じゃないのよ!」

「面白くなんか無いわよ。
断るどころか……自分から次の約束をしちゃうんだから」

 自分でも何をやっているのかと思う。
あの後も色々と考え過ぎて眠れなかったぐらいだ。
 馬鹿なことをしているとは自分でも思う。
よりにもよって……ヤクザ相手に。
 保健室で奈緒が淹れたコーヒーを飲みながら、さらにため息を吐いた。

「いやいや。十分に面白い展開でしょ?
 だってあんたのお見合い相手がヤクザの親分で天使かと思うぐらいの可愛さなんでしょ?
 ギャップ萌えじゃない。ギャップ萌え」

 奈緒は、コーヒーが入ったマグカップを握り締めながらそうツッコんでくる。
 ギャップ萌えって……ちょっとあんた。
漫画やアニメの世界みたいに……。

「そんないいものではないわよ……相手は、ヤクザよ?
 しかも結構名高い……」

 親御さんや教頭とかに知られたら大目玉だわ。
大体そんな……萌えるようなものでは……。
 そう言いながらも鬼龍院さんの天使の笑顔を想像してしまった。いや……萌えるか。