慌てて私は、そう言い返すと鬼龍院さんは、
少し寂しそうな表情で続きを話してきた。
「だから…恋するにも自信がなくて、そんな時に上紗さんを見かけて……どうしてもお近づきになりたくて。
それを部下達に相談したら女は、ギャップに弱いから最初にクールに見せてから徐々に本心を見せたらいいと
教えてもらって……」
あぁ、それでか。私は、すぐに納得した。
最初のお見合いに見せたクールで大人の雰囲気を漂わした鬼龍院さんは、偽者だったのか。
こちらが本物……まんまとギャップにやられてしまったわ。
だが怒る気持ちにはならなかった。
どうしてかというと、明らかにこっちの鬼龍院さんの方が好みだからだ。
クールで知的な雰囲気もある鬼龍院さんは、確かに大人で素敵だ。
いかにもヤクザの若頭という感じだ。
だが、この鬼龍院さんは、どうだろうか?
ヤクザの若頭の雰囲気は、まったくない。
それどころか何処かのか弱い男子生徒を見ているような危なげで放っておけない感じだ。
昔から気が強くてお節介なところがある私は、こういうタイプの人を見ると放っておけなかった。
つい声をかけてあげたくなる。それに……あの笑顔。
どうしても忘れられない。
「……ごめん。引いたかな?
僕もこの性格を直したいと思っているのだけど家族や部下は、そのままでいいと言ってくれて。
なかなか直すことも出来なくて……でも分かってほしい。
僕は、嘘をついたけど君の好きって気持ちは、嘘ではないから……」
頬を染めながらも真剣に言ってくる鬼龍院さん。
少し不安な声だった。
私は、その言葉を聞いて胸がキュンとした。
そして何だか恥ずかしくなってきた。
こんなに真剣に好きだと言われたことがないからだろうか?
すると告白したことに気づいた鬼龍院さんは、ハッとしたのか耳まで真っ赤になっていた。
「ご、ごめん……忘れて。恥ずかしいから……」
顔を隠すように手で押さえていた。
それがまた可愛らしくて……こっちまで恥ずかしくなってきた。
頬が熱くなり身体まで火照りそうだ。
「あ、謝らないでください。こっちまで恥ずかしくなりますから……。
それに引いていませんから」
「本当……?」
「本当です。だって嬉しいので……」