今でも考えると不思議な気分で懐かしい。
そんな風に思っていると黒江お兄ちゃんが何かに気づいた。

「あれ?上紗ちゃんって結婚しているんだ?」

えっ?あっ……。
 私の左の薬指についている指輪を見てそう言ってきた。
 キラリと光るシルバーの指輪だ。

「はい。結婚してまだ3ヶ月目なんですが」

 まだ新婚だ。ちなみに椎名のままなのは、急に変わるとややこしくなるので学校だけ旧姓のままにしてある。
 家に帰ると鬼龍院の苗字になるのだが、まだ慣れない……。

「へぇ~どんな人?」

「えっ……えっと……」

……どう説明したらいいのかしら?
 黒江お兄ちゃんだから素直に話したいところだが、極道の若頭と言ってもいいのだろうか。
 恥ずかしいことではないと思っているが、教員なので軽々しく言ってもいいものなのかと悩んだ。

「と、とても素敵な方ですよ。
笑顔が素敵で優しくて……私には、勿体ない人なんです」

 嘘ではない。鬼龍院さんは、笑顔の素敵で優しい。
私には、勿体ない旦那様である。

「そうなんだ。幸せそうで良かった。
どんな職業の人?」

 えっ……?何でそんなに聞くのだろうか?
職業まで聞かれるとは、思わなくて驚いた。

「あ、ここです!クラスは……」

 思わず誤魔化した。詳しく言いたくないのでクラスに着いたのは助かった。
 どうしてそんなことを聞いたのかしら?と私は、不思議に思った。
 そしてクラスに入ると黒江お兄ちゃんは、自己紹介をする。