私は、驚いて声を出してしまった。
なんと赴任してきた男性教師は、私が子供の頃に隣に住んでいた9つ上のお兄ちゃんだったのだ。
背が高くサラサラの黒髪で端正な顔立ち。
優しくて小さい頃の私を可愛がってくれた。私の初恋の人だ。
高校を卒業してから海外の大学に行き教師になったと聞いていた。
しかしまさか、こんなところに出会えるなんて夢にも思わなかった。
前は、後ろ髪を結んでいたが今は、バッサリと切っていた。
高校生の時も大人っぽかったけど、さらにカッコよくなっていた。
「えっ?もしかして上紗ちゃん!?」
「はい。隣に住んでいた椎名上紗です!
お久しぶりです。黒江お兄ちゃん」
あぁ、やっぱりそうだわ!!
私は、嬉しくて昔の記憶を思い出していた。
あの優しい笑顔は、今も変わらない。
「おや?椎名先生は、黒江先生とお知り合いですか?
でしたら丁度良かった。
黒江先生は、椎名先生と同じ英語教師として一緒にやってもらいます」
教頭からそう言われた。
えぇっ!?黒江先生と一緒に?
それは、光栄なことだが本当にいいのかしら?
「黒江先生は、大学でも大変優秀で海外の学校では、生徒にも評判の良かった方です。
きっと受験を控えた生徒にもいい影響を与えてくれると期待していますよ!」
上機嫌で話す教頭に私は、苦笑いする。
悪かったわね……私だと不十分で!
黒江お兄ちゃんを見るとクスッと笑っていた。
何だか照れくさいわね。
しかし、気づいていなかった。それが大変なことになるとは……。
自己紹介が終わると職員室を出て私と黒江お兄ちゃんは、一緒に教室に移動することにする。
「しかし驚いたよ。まさか赴任した学校にあの小さかった上紗ちゃんが居たなんて。
しかも俺と同じ英語教師になっていたし」
「私もです。まさかこんなところで黒江お兄ちゃんに出会えるなんて思わなくて」
こんな偶然もあるんだ。
隣で歩いているだけでドキドキしていた。
まるで昔に戻ったみたいだ……。
小さい頃は、お兄ちゃんの帰りを待っていたり勉強を教えてもらったりした。
お兄ちゃんが英語教師になりたいと言っていたから私も憧れて教師を目指すようになったぐらいだ。