これは、舐めてかかると痛い目に遭うと思った。
反対されたら終わりだろう……。
心臓が飛び出しそうになるぐらい緊張し強張る。
「君かね?椎名上紗さんは。
ほう……確かに聞いた通りに綺麗で、真面目そうな子だな」
「は、はじめまして、椎名上紗と申します。
息子さんの葵さんと結婚前提にお付き合いさせて頂いております。よ、よろしくお願いします」
カミカミになりながらも2人の前に行くと正座をして頭を下げた。うっ……噛んだ。
しかし無言で何も語ろうとしない。あれ……?
私は、ビクビクしながら頭を少し上げた。
すると鋭い目付きで私を見ていた。
ビクッと肩が震え上がった。
「なるほどな……いい度胸だと言ったところか。
しかし、それはあくまでもカタギの世界での話だ。
我々の組に嫁ぐとなると今までの生活のようにいかなくなる。
我が鬼龍院組は、規模がデカい分、命を狙われたり危ない目に遭ったりもする。
話を聞いている程度の甘い危険ではない。
人の血の海も見るかもしれないが、その覚悟はおありなのか?」
血の海……!?
私は、その言葉を聞いた時……怖いものを想像した。
いくらなんでも……今の時代にそんなことは。
「今の時代にないと思うかね?
まぁカタギの人間が知らないのも無理はない。
世間の報道、警察全てを我々が踏み潰せる。
それに警察の警視総監は、私の友人だ。
いくらでも揉み消すなんて造作もない。
そのために人を殺すことも厭わないが……君は、まだ若く聡明な教師だ。
無理に我々の世界に足を踏み入れる必要はない」
「今ならまだ間に合う。
教師を取るか、嫁ぎ教師を辞めるかハッキリさせた方がいい。
息子のためにも、いや……自分のためにもだ」
鬼龍院さんのお父様は、ハッキリと強い口調で言い放ってきた。
えっ……?話と違う……それだと。
「ちょっと待って下さい。話が違います!!
結婚したら教師を続けてもいいと鬼龍……息子さんから聞きました!
それに血の海とか、殺すとか、そんなの犯罪じゃない!!」
「そ、そうだよ……父さん!!
上紗さんには、結婚しても教師を続けてもらうし、そのために僕だって……」
「黙れ!!これは、組のためだけではなく、彼女のためにも言っている。
それぐらいの覚悟もないのに嫁に来る資格などない」
お父様にハッキリと告げられてしまった。
反対というより覚悟を見せろという意味で……。
お母様には、許してもらえたと思っていたが
まさか……こんなところで選択肢を迫られるなんて