鬼龍院さん……。
彼は、母親の意思ではなく自分の意思で私を誘ってくれた。
それは……つまり鬼龍院さんの本音だ。
「……はい。私も一緒に過ごしたいです」
嬉しい……。
私の気持ちは、すでに決まっている。
鬼龍院さんは、それを聞くと頬を染めながらニコッと微笑んでくれた。
その笑顔は、キラキラしていつもの倍に増して天使っぽかった。
そして食事を済ませると私と鬼龍院さんは、部屋に向かった。
高級ホテルのスイートルームは、豪華でこちらもイルミネーションが一望出来た。
なんてロマンチックなのだろう。
「さ、先にシャワー浴びてきますね」
素敵なイルミネーションだけど、これからのことを考えると見ている余裕はない。
緊張して何かをしていないと心臓が持たない。
浴室に向かうとシャワーを浴びた。
静まれ……心臓。自分で何度も言いかした。
身体をゴシゴシと洗い清潔にすると私は、バスローブに着替えた。
これで……いいのだろうか?
初めてだから流れが分からない。
これから起きることにドキドキしながら浴室から部屋に戻る。
すると鬼龍院さんは、丁度バスローブに着替えている最中だったらしく背中が見えた。
悲鳴を上げて慌てて手で目を隠した。
だが、しかしあることに気づいた。あれ……?
「あ、あの……ごめん」
鬼龍院さんは、見られたと思ったのか申し訳なさそうに謝ってきた。頬を染めながら
いや……それよりも気になることが。
「あ、いえ。それはいいのですが……あの。
鬼龍院さんって……もしかして刺青って彫ってないのですか?」
ヤクザの背中って全体に龍とか仏みたいな刺青を彫っている印象がある。
それを見たら暴力団だと分かるぐらいに大きく。
しかし鬼龍院さんの背中は、鍛えられた筋肉だが綺麗な白い肌だった。
すると鬼龍院さんは、恥ずかしそうに頬を余計に赤く染めて顔を隠していた。
「や、やっぱり変ですよね……すみません。
本当だったら成人した時に刺青を彫るのが仕来たりなんですが、どうしても怖くて。
直前で泣いてしまい辞退したんです。
母や周りは、それでいいと言ってくれたんですが本当に……意気地無しで恥ずかしい。
やっぱりこんな背中だと嫌ですよね?
ぼ、僕……頑張って彫りますから……」
何だか泣きそうな表情で訴えてきた。
いや……むしろこのままで居て下さい!!
私は、心の中でそうツッコんだ。