鬼龍院さんに出会ってから驚くことばかり経験している。
 極道の世界に嫁げは、あのような出来事は、日常に起きるのかしら?
 危険が多くて命だって狙われることもある。

 それは、普通で生活していたら起きないことだ。
私にそれが務まるのかしら?
 あ、いや。嫁ぐとか先の話で。
まだお見合いをしただけの関係なのに何を考えているのだろう。
 意識をすると身体が熱くなってきた。

「もう……出よう」

 これ以上考えていたらのぼせそうだわ。
お風呂から出ると渡してくれた浴衣に着替えた。
 これも……温泉旅館みたいだ。

 そして、食事だといい鬼龍院さんの部屋を通してくれた。
 うん?何故鬼龍院さんの部屋なのかしら?
不思議に思いながら通してくれる。
 広い部屋のテーブルには、お茶漬けなどの軽い軽食が用意されていた。
 だが奥を見ると布団が2つ並んで敷いてあった。
ちょっと……待って!!何で布団が2つ敷いてあるのよ?
 すると背後から気配がした。

「ごめん。部下達が勝手に敷いちゃったんだ……」

 振り向くと鬼龍院さんだった。
浴衣を着ており頬を赤く染めていた。
 そ、そうだったの……。
私まで頬が赤くなってしまう。
 これって……一緒に寝ろってことよね?
状況を理解すると身体が火照って心臓がドキドキと高鳴ってきた。

「と、とりあえず食べようか?」

「は、はい」

 鬼龍院さんが照れながらそう言ってきたので私は、素直にそれに従った。
 向い合わせで席に座ると一緒にお茶漬けを食べる。
鮭とワサビが効いていて美味しい。
 しかし、それ以上に緊張してお互いに沈黙が続いた。

 どうしよう。何を話したらいいか分からない。
お互いにお喋りが得意って訳ではない。
 すると鬼龍院さんから重い口を開いた。

「上紗さん……しばらく会うのをやめよう」

 えっ……?
私は、その言葉にショックと唖然とした。
 何で……そんな急に……?
拒否られたのかと思った。
 すると鬼龍院さんは、慌てたように箸を置いた。

「あ、しばらくと言っても案件が片付ける間だけだよ!?
 今回の件の伊崎組は、相当ヤバい奴らだ。
俺達を潰すためなら卑怯なやり方もしてくるかもしれない。
 安全のためにも上紗さんとは、距離を置きたいだけなんだ!」