「リリカ~、あいつがいると落ち着かないよ~。もうさっさと魔法使ってそれ直しちゃいなよ~」
「イ~ヤっ!」
「でもさ~、本当に夜までいられたらどうするの?」
「……流石にそれはないと思いたいけど」
「明日も、明後日も、ずーっと来るかもしれないよ?」
「う……」

 リリカが嫌そうに顔を歪める。

「それとオレ、あの人どこかで見た気がするんだ」
「どこで」
「それは、わからないけど……絶対、どこかで見たと思う」
「あれだけの顔、一度見たら忘れないと思うけど」

 それを聞いてピゲは少し意外に思った。

「リリカ、実はああいう顔が好みだったりする?」
「そういう意味じゃない! 昨日言ったでしょ。苦手なタイプだって」
「ふーん」
「はぁ。……紅茶くらいは入れたほうがいいかしらね」

 そう言いながらリリカは億劫そうにお湯を沸かしに行った。

 ――リリカの浮いた話をピゲは今まで聞いたことがない。人間の20歳なら恋人くらいいてもいいのに。でもリリカの恋人をピゲは全く想像できなかった。

   ◆◆◆


 ボーン、ボーンと振り子時計が12回鳴り終わった頃に男は戻ってきた。

「私、普通のって言いましたよね?」
「いやぁ、だって可愛かったから。僕も同じのを買ったんだ。ほら」

 男が買ってきたサンドイッチはいつもリリカが買う「普通の」ではなく、子供向けのピカピカと光るサンドイッチだった。
 しかし買ってきてもらって文句は言えない。仕方なくリリカはお礼を言ってにこにこ顔の男からそれを受け取った。ハムサンドはいつもと同じでピゲは少しほっとした。

 カチャ、とリリカは男の分の紅茶をカウンターに置く。

「良かったらどうぞ。お砂糖いります?」
「あぁ、ありがとう。もらおうかな」

 頬をピカピカと光らせながら立ち上がった男を見てリリカは心底呆れた顔をした。