そしてその日は訪れた。

目を覚ましたレイアはソロの腕に抱かれて眠っていたことに気づき、朝一番の大きな声をあげる。

その声で目を覚ましたソロは非常に機嫌が悪そうで、眉をひそめながらさらにレイアの身体を強く抱きしめる。

あわあわと慌てふためくレイアに対し、レイアの気持ちを知らないソロはある意味最強の鈍感なのかもしれない。

朝からソロにふりまわされ、妙に疲れた出だしとなってしまった。

寝ぼけていたソロがようやく覚醒すると、レイアから離れ寝台をおりると窓際へと歩み出す。

レイアは立ち上がり、ソロのもとへと駆け寄ると身を乗り出すようにして窓の外を見る。

外を見ると人で溢れかえっており、改めて今日が国の式典が行われる日なのだと認識した。

マリカは式典を見るだけで良いといった。

式典を見る事に一体何の意味があるのか、現状では理解出来なかった。

だがせっかく王都に訪れたのだからたまにはこうして国民として行事に参加するのもよい。

マリカに会って、昨日のことを謝罪して、自分の気持ちを素直に伝えたい。

マリカを嫌って泣いたわけではない。

言い訳にしか聞こえないかもしれないが、マリカに嫉妬して泣いてしまったことは事実なのでそこは素直に謝りたいと思っていた。

しばらく窓の外を見た後、レイアは荷物から衣服を取り出し、仕切りをたててゴソゴソと着替えをする。

ベージュ色のワンピースには金糸で刺繍が施されており、花草が渦巻くようにして描かれている。

腰には赤い布を巻き、ベルトのようにしてウエストを縛っている。

膝半分までの長さの厚手のブーツをはき、髪はまっすぐに下ろしている。

その上に外套を羽織り、フードをかぶってしまうとレイアの外見はほぼ見えなくなってしまっていた。

ソロもまた簡易な衣装に着替え、腰にシンプルな刺繍の編まれた布を下げる。

レイアと同じ外套を纏ってしまえばその美貌はすぐに消せてしまった。

だがソロは顔が見えなくても雰囲気で人を魅了してしまう。

たとえ外套を羽織っていたとしても魅入る人は魅入るのだ。


着替え終り、仕切りから顔を出すレイアに手を差し出すソロ。

その手に少し躊躇しながらもゆっくりと重ね、嬉しさに動かされて反射的に微笑む。

それを見て満足したソロは口角を上げ、レイアの手を指で一撫ですると力強く引っ張っていく。

まだマリカに会うのは怖いし、ちゃんと自分の思いを告げられるかは不安であった。

だがその不安を振り切り、レイアは宿屋を出ると空に浮かぶ熱い太陽を目を細めて見つめた。

ギラギラと焼け付くような日差しだ。

こんな晴天に恵まれた日、突如として行わることになった式典。

一体そこで何が起きるのか、レイアには予想がついてなかった。

人ごみにまぎれ、城の前まで着くとなるべく前の方へと進んでいく。

こんなに人がいてマリカは無事にレイアたちを見つけられるのだろうか。

そんな不安もありながらも、今はじまろうとする式典に向け気持ちを切り替え、レイアは居城の一角を見つめた。

そこが王族が顔を出す場所で、国民と交流する場所だ。

白を基調とした建物は濃紺の丸い屋根で覆われ、城の回りには見張り台として四本柱が立っていた。