12月1日・群馬県渋沢町

 もう師走。上州名物の“からっ風”が吹き荒れ、“かざはな”と呼ばれる粉雪が舞う。

 渋沢温泉もクリスマスらしい飾り付けがされ、15日に控えた佐々山電鉄の運行再開に合わせた観光列車“いかほろ”号の予約も始まる。マスコミのテレビ放映が貢献した。

 マスコミは当初は、日本で一番危険な鉄道会社という悪名から如何に復活するかという視聴者の興味と沿線住民の不安やバッシングを交えた番組制作を考えて居たらしい。

しかし、予想外に地域住民も観光関係の組織も、一丸となって佐々電を支援している事で方針を変えて、地域で支える鉄道という感動的なドキュメンタリーに舵を転換した。

 特に、ご長寿番組に主演してる山城が好きな落語家と、地元の小学6年生・詩織ちゃんの沼川西地区にある天照神社裏にある築城者不明、城の名前もわからない山城調査の番組は予想外に全国から山城ファンが足を運び赤字のコミニュティーバスも増便が出た。

 群馬県渋沢町。群馬県立渋沢実業高校の教室。

 この日は、平日で優と美佳は期末試験のため学校でテストを受けていた。

 優は、インスタントハッピーカンパニー研究所や応援団の激務の間を見て学校の勉強をしていたが、美佳は観光列車運行に熱中するあまり学業が疎かになっていた。

 一時間目のテストを終えて美佳は青ざめていた。

「やべえ。赤点の可能性が極めて濃厚だ。優は大丈夫なのか?」

「あー。うん。なんとか」

「うわぁ。裏切り者っ」

 美佳は頭を抱えながら、次のテストの教科書をパラパラと捲っていると早苗が来た。

「よっ。調子はどうかね?」

「あー。良くはないね」

 早苗は美佳に「そういえばさ。昨日、美佳によく似た女子が温泉街を歩いていたぞ」

「はぁ?」

優は、ハッとした。

 近くに居た女子達が「早苗っ。その話。アタシも知ってる」と駆け寄ってきた。

「最初は、アタシも美佳だと思って声かけたらさ。顔は似ているけど別人だった」

「そうそう。髪を染めていてさ。絶対に美佳が着ないようなアメリカンファッション」

「でもさ。顔が美佳なんだよね。クローン人間か、生き別れの一卵性の双子って感じ」

 美佳は「あははっ。怖いな。それって三人揃うと死んじゃうって奴だよね」と笑う。

優は、知っていた。

(桜庭支社長が言っていた美佳ちゃんの妹だ。確かアメリカに居る筈)

 女子達は「美佳が二人も居たら、その段階で地球が滅亡するよ。そっちの方が怖い」

 大笑いされる中で美佳は、プクッと頰を膨らませた。