午前0時
師走の街はいつもより人出が多く、私はなぜか家に足が向かない。
とりあえず駅前の、ファミレスを目指して歩く。

忘年会シーズン。
クリスマスまで1週間。
みんな楽しそうだあ~


窓際の席に座り、フライドポテトとドリンクバーを注文。
私はカバンから携帯を取り出した。
電源はオフのまま。

きっと、たくさん着信があるはず。
そう思うと、怖くて電源が入れられない。
このまま、時間をつぶして朝になったら学校へ行こう。
今夜は帰りたくない。

「・・・」
でも、暇だ。

ファミレスで一人。携帯オフのまま過ごすのは、拷問。
でも、パパのところに行くわけにもいかない。


午前4時。

もー無理。
暇。暇。
私はたまりかねて、ファミレスを出た。


始発まで1時間。
コンビニでコーヒーを買って、駅のベンチで時間をつぶすか。

んっ?
目の前のポスターが、目に留まった。

出雲大社?

島根県の観光ポスター。
『きなんせ、島根』
方言で、島根にいらっしゃいという意味だそうだ。

島根は拓人さんの故郷。
私も母さんと何度か訪れている。

「行っちゃおうかな?」


午前6時半の新横浜駅。
行きかうのはビジネスマンばかり。
コンビニでお金をおろし横浜から出雲までの切符を購入した私は、新幹線のホームに向かった。
バイト代を貯金していたから、お金はある。
制服の入ったかばんは、駅のロッカーに預けた。

今日は金曜日。
学校は通常授業。

「ふう~」
大きく息を吐いて私は携帯を取り出した。

覚悟を決めて、電源を入れる。

ピコンッ  ピコンッ  ピコンッ  ピコンッ・・・・・・

ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ・・・・・

着信音が鳴りやまない。


まずは、母さんと拓人さんをブロックして、私は家族ラインにメッセージを打ち込んだ

『心配かけてごめんなさい。
事故にも事件にも巻き込まれていません。
私は元気です。
ちょっとだけ一人になって考えたいだけなので、心配しないでください。
日曜には帰ります。
それと、今日は学校を休みます。
できれば、欠席の連絡をお願いします。
本当にごめんなさい。        優』

送信とともに、再び電源をオフにした。