舌と舌が絡み合っていた。ぴちゃぴちゃと、唾液が交わる卑猥な音だけが、生徒会室に響き渡る。
 みんなの憧れの生徒会長・ユウミ先輩が、普段の高潔なイメージとは全く別の表情をして、椅子に座っている僕に跨っていた。()()()()()()()()()()()身動きのできない僕は、ただされるがままに、ユウミ先輩との口づけを受け入れるしかなかった。
 彼女の舌は、僕の口の中のものを全て吸い取ってしまうんじゃないかと思うくらい妖艶で、優しくて、僕の全てを蹂躙していた。

(生徒会室で何やってるんだ、僕は⋯⋯)

 そんな事を一瞬思うが、柔らかい舌先が僕の舌先を悪戯につついてから、また絡み合ってきて、思考を中断される。ユウミ先輩の口からわずかに流れてくるミルクティーの香りと味が、切なくて、甘くて⋯⋯身体中の血液が巡り巡って、気が狂いそうだった。

 ユウミ先輩の長い黒髪が僕の頬を擦れて、少し痒い。でも、そんな事どうでもよくて、脳みそがとろけそうになるくらい甘美さに思考を支配されて、もう何も考えられない。
 僕は誰かと約束をしていたはずなのに⋯⋯その笑顔が大好きだったはずなのに⋯⋯その笑顔どころか、顔も思い出せなかった。今目の前にいる、ユウミ先輩に全てを満たされてしまっていて、他の事がどうでもよくなる。きっと、この両手が自由だったなら、僕は、先輩を力いっぱい抱き締めていただろう。

 でも、僕にはそれができなくて、この手錠が、これほど邪魔になると思ってなくて、外してくれと懇願したくなる。でも、先輩の唇に口を塞がれていて、僕は何もできず、ただ、先輩の口付けを受け入れるしかなかった。

(どうしてこうなった⋯⋯?)

 僕は、蕩けそうな意識の中、ほんの少し前の事を、何とか思い出そうとした。