「颯太(そうた)」


君の凛とした声が、許可もしていないのに僕の名前を呼んだ。


「何?」


そう素っ気なく答えても、君は気にせずに話し続ける。


「頭が痛い」


「へー」


彼女はいつも、こういうどうでもいいことを言い出す。


僕は君に興味が無いから、君との会話はいつもこれで終了だ。


だけど、今日は違ったらしく、君は振り向いた。


「もうすぐ死ぬからかな」


君はそう言って、少し悲しそうに笑った、ような気がした。


「死ぬんだ」


どうでも良すぎて彼女の目も見ずに発すると、君は視界の端で少し頷く。


「病気だからね」


初めて聞いたことだけど、君のことだからどうせ嘘だろう。


対して気に留めずに延々と歩を進める。


「どこまで行くの?」


そんな君の問いに、小さく「別に」と答えると、君はため息をつく。


普段は僕がため息をつくと、「幸せが逃げる」とおかしな夢物語を語り出すのに、自分がため息をついている。


「なんの病気」


そんな君に違和感を覚えて独り言ように呟くと、君は待っていたかのように笑った。


「なんだと思う?」


ああ、また始まったか。