まるで夢を見ていたようなそんなふわふわとした朧気な感覚に陥ったが、手の中には紛れもなく存在するぐいのみグラス。
耳の横を触れれば花があった。

私は花をそっと外してみる。
花びらがフリルのように幾重にも重なったそれは、トルコキキョウだった。

花言葉は“感謝”や”希望”、“よい語らい”を意味する。

「もうっ、罪作りですよ、火の神様。」

私は空を見上げて呟いた。
早朝の清々しい風が優しく吹き抜けていった。



【END】