「些細なことですれ違っていたんですね。分かり合えてよかったです。すごく素敵でした。私も、火の神様と咲耶姫様みたいな素敵な恋がしたいです。」

まあ、濃厚なキスは置いといて、お互いに想いやるという当たり前のようで難しいこと。今の私にはまったくできていなかったこと。
人を愛するってそういうことなのかな。
ぼんやりとそう思う。

「まずは高志と別れないとなぁ。」

昨夜大喧嘩した高志とのことを思い浮かべて、私は苦笑いをした。

「そうか。だが、何はともあれお前がきっかけをくれた。私は火の神でもあるが同時に縁切りをもたらす神でもある。お前の悪い縁を切ってやろう。」

「悪い縁?」

ふわりと柔らかく下ろされ、私の足はようやく地に着いた。

「また咲耶姫のところに遊びにきてくれ。あんなに楽しそうにしている姫を見たのは久しぶりなのだ。あの笑顔を引き出したお前に嫉妬してしまうよ。」

「はい、ぜひまたお願いします。女子会とても楽しかったです。ちゃんと咲耶姫様にお礼を言うのを忘れていました。伝えていただけますか?」

「わかった。咲耶姫からもこれを預かっている。」

火の神様は袖に手を入れた。
そして差し出されたものは、キラキラと輝くぐいのみグラスだった。