襖をきっちりと閉めた咲耶姫様はこちらを向き直ると眉を下げた。そんな表情もまた可憐で、私はほうっと胸を撫で下ろす。

「すまなかったな。」

「いえ、何かすごく熱かったです。」

額の汗を拭う私に対して、咲耶姫様は涼しい顔をしている。自分で思うよりもはるかに緊張したのだろうか？と思ったのも束の間。

「あいつは火の神だから、興奮すると燃えるのだ。」

「えっ！神様？！燃える？！」

「おかげでお前の服が乾いたな。」

咲耶姫様は可笑しそうに笑う。
部屋の隅に掛けてある雨で濡れた服を見れば、すっかりと乾いたようだった。
火の神様恐るべし…。

「えっと、火の神様？あの方は何をしにいらしたのでしょう？見舞いがどうとか…？」

私が疑問を投げ掛けると、咲耶姫様の顔が曇る。

「どうもこうも、私の顔の痣を嘲笑いに来ているだけだ。」

咲耶姫様は冷たく言い放つ。

「ええ？でもお花、置いていかれましたよ。」

私は襖の前に無造作に置かれている花を手に取った。どこかで摘んできたのだろうか、切り口が雑だが、紫色の花が見事に咲いている。
これはキキョウ…？

「あ、それに、火の神様って、もしかしてこのぐいのみ作った方ですか？」

私は先ほどまでの会話を思い出した。
確か、火の神に作ってもらったお気に入りだと言っていた。

んんん？
もしかしてもしかする？
私の(あまり当てにならない)第六感がピーンと反応する。