「だーかーらー、『妖怪ボーイ』の天狐さまが表紙のやつ! さっきから何度もそう言ってんだろっ」

 「も、申し訳ございません。もう少々お待ちください」

 「さっきからずっとこうして待ってるわっ」


 平謝りしながら書籍検索ソフトに“妖怪ボーイ 天狐”ともう一度叩き込む。しかし画面に表示されるのは先ほどと同様「ヒットしません」の文字だった。客は爆発の一歩手前といった顔で、元の鋭い目つきも相まってすごみが増している。

 なんで出てこないのよお、と半泣きになりながら「雑誌の棚を確認してまいりますので」と断りを入れる。「とっとと行け」と顎で示され、カウンターを飛び出した。

 雑誌棚の前に座り込み、棚下のストックを引っ張り出す。ひとつひとつ手に取り表紙を確認していると、手元に影が落ちた。


 「何した」


 低い声が耳に届き、ハッと顔をあげる。

 カッターシャツに黒いパンツ、指定されたデニム生地のエプロンを身に着けたすらりとした男だ。神経質に切りあがった涼し気な目が私を見下ろす。