「それがですね……ユリア様にビンタされたのが
相当ショックだったのか寝室から出て来なくなりまして」

いや。だからって、それで何故引き籠る必要があるのよ?
私は、呆れながらドアノブを握る。
確かに鍵がかかっており開かなくなっていた。
これは、困ったわね……。

「もう……ユリア様がさっさとヤラせないから
陛下が拗ねちゃったじゃないですか」

「アミーナ。ちょっと言葉に気を付けなさい。
誰がヤラせないですって……」

相変わらず一言多いアミーナだ。
しかし本当に、このままにしておく訳にもいかないし
そもそも拗ねてるの……これ?
あんた……極悪非道の皇帝で通したいんじゃないの?
これだとただの引き籠りだ。

「ちょっと出て来なさいよ!?
いつまで、そうやって居る気なの?
いい加減にしないと知らないからね」

私は、怒りながらドアを叩いた。
だが返事もしないし、鍵を開けられる様子もなかった。
ちょっと……何無視してんの!?
その態度にキレそうになるが慌ててロンに止められる。

「ユリア様……落ち着いてください。
陛下は、大変繊細な方です。あまり大声でお叱りになると
なおさらビクついて出て来られなくなりますから」

大声で叱ると出て来られなくなるって……。
あんたは、子犬か!!とツッコミたくなるが
その瞬間ハッとする。確かに叱られて籠って
落ち込んでいる姿は、子犬みたいだ。

だからエレンは、あの男の印象に
キャンキャン吠える子犬と言った訳だ。
今さらながら納得する。

だがしかし……だからと言ってそれでいいの?
仮にも皇帝陛下なのに……。
極悪非道な皇帝だと噂では散々言われていたけど
あまりにも態度が違い過ぎて接し方に戸惑ってしまう。
するとアミーナが私にこっそりと話しかけてきた。

「ユリア様。この際にまた一緒にお風呂に入る
約束をなされたらどうでしようか?」

「はぁっ?何で……私が!?」

「この際……妥協をしましょうよ!
陛下は、打たれてユリア様に嫌われたかもしれないと
思ったからショックなんだと思います。
ならユリア様からお誘いすれば万事解決します」