「ちょっと出て来ないでよ!?
いいから……私が出ていくから」

「うるさい。俺が先に出て行きたいだけだ」

何故だかお互いに出て行こうとする。
強引に行こうとするから弾みで私は、足を滑らせ
前に転びそうになった。転ぶ~!!
しかし直前であの男に支えてもらい助かった。
だがしかし、支えた手の位置が悪かった。
胸を鷲掴みにされる。

ムギュッと揉まれる胸。
現実世界の私は、さほど大きくない胸だが
異世界の私の胸は、それなりにある。
だから余計に胸の感触が直に来てしまい
悲鳴があげた。それは、もう大騒ぎで思わず
向きを変えるとあの男を平手打ちした。
バチンッと大きな音が浴室に鳴り響いた。

その後は、興奮しながら浴室に出ると
覗き込んでいたアミーナとエレンが慌てていた。
私は、居ても立っても居られず急いで着替えると
自分の部屋に戻った。

まさかあの男に胸を揉まれるなんて……。
恥ずかしいやら腹が立つやらで心が落ち着かない。
だが部屋に戻るとアミーナが
「もう……何故平手打ちなんかしたんですか?
陛下相手に平手打ちなんて考えただけでも恐ろしい……。
それに夫婦なんですからいいじゃないですか!?」と
私にそう言ってきた。

「いやいや。良くないでしょ!?
だってあの男胸を触ってきたのよ?直で……。
それに夫婦なんて形式で私は、ただの人質よ!!」

愛し合っている夫婦ならいいが。
私達は、あくまでも形式の夫婦で人質だ。
今までそんな経験も交わしたこともないのに……。

「いいじゃないですか?胸ぐらい。
減るものでもないのだし……好きに揉ませあげたら」

いやいや。だから形式なんだってば。
それに好きに揉ますとか減るものでもないって
アミーナ……あんたって子は。
侍女である彼女の意見に唖然とする。

呆れているとしばらくしてエレンが部屋に入ってきた。
あの男のところに居たのだろうけど
酷く慌てた様子だった。

「ユリア様。大変です。陛下が打たれたショックで
部屋に引き籠ってしまいましたわ」

はぁっ?引きこもり?
一体どういう意味だと首を傾げたが、エレンに
強引にあの男の寝室に連れて行かれた。
ドアの前には、ロンが居た。

「あ、ユリア様……」

「これは、どういうことですか?」