私は、笑顔で言うと馬車に乗り込む。アミーナも
あの男は、大丈夫だと言い自分の馬に乗る。
そして走り出した。
手を振ると同じように振って見送ってくれた。
改めてお別れになると寂しいものだ。
最初は、こちらの両親だと言われても実感なんて無かったし
早々と嫁いでしまったが、とてもいい人達だった。
国もそうだ。最初は、異世界に帰るためとか
そして弱味を握るためとか、国を守るために
嫁いだだけだったのに……今は、エミリオン帝国に
早く帰りたいと思っていた。
それは何故なのか?
向こうもいい人達が居るのもあるが
あの男が居てくれるからだろう。
いつの間にか大きな存在になっていた。
あの男の妻としてもだが、そばに居るのが……。
チラッと窓の方を見る。
あの男は、馬車と合わせるように馬で走っていた。
本当に大丈夫なのかしら?熱も出たのに。
私は、心配になり窓を開ける。
「ねぇ本当に大丈夫なの?怪我……痛くない?」
「心配無用だ。これぐらい大したことはない」
「でも……熱出した後だし」
ロンが言っていた。元々熱を出しやすいって。
我慢強いというか意地っ張りな人だから
無理してないかと心配になる。
いつの間にかあの男の身まで心配しているなんて
あの時は、想像も出来なかった。
だが、そんな私を見てあの男は、フッと笑ってきた。
「心配しなくても平気だ。俺は、あれぐらいで
くたばらないように日頃から鍛えてある。
今は、すぐには熱は出さん」
私を心配ないようにそう言ってきた。
それならいいのだけど……。
あの男もまた私の気持ちを理解していた。
少しずつでも確かに通じているものがあるようだ。
そして、無事に帰還する。だが……しかし。
あの男は、また熱を出していた。
ちょっと鍛えてあるから、すぐには出さないのではなかったの!?
「何処が、すぐに熱を出さないのよ!?
結局すぐに出しているじゃないのよ?」
「うぅ……ごめんなさい……」
まったく……とため息を吐いた。
まぁ、でもまた素直なあの男が見えたから
良かったのか悪かったのか……。
何だかなぁ……と思うのだった。