俺の世界は、物心ついた時から畳4畳分の病室の中だけ。


病室の窓からは、隣の建物の壁しか見えない。

数年前までは自由に行き来していた病院内も、最近は症状の悪化でめっきり出歩けなくなった。


両親は生まれつき体が弱かった俺を赤ん坊の頃に捨て、俺の面倒を見てくれた祖母も認知症を患い施設に入居しているという。


だれとも話さず白い天井ばかりを見つめる毎日はあまりにからっぽで、日常だけでなく、心までもが感情というものが溶けてなくなって空っぽになっていくようだった。


そんな俺を見かねて、従兄弟の柾くんが、スマホを持たせてくれた。


最初は操作する気にもならなかったけど、柾くんの気遣いをむげにすることも躊躇われて何気なくいじっているうちに、チャットを見つけた。


――多分、ログイン時間がすごく近かったから。

そんな単純すぎる理由で俺は、自己紹介文に「趣味はカメラ」と書かれたユーザーネーム・ひまわりさんに声をかけたのだった。