ふんふふんふふーん♪
アベラード卿は、ご機嫌だった。
色々なゴタゴタから解放されて、仕事もはかどっていた。
「よーし、あともう少しで出来上がるぞ!」
ガチャ!
「失礼するよ。アベラード卿はいるかい?」
宮廷で働いているハンプトン子爵が訪ねてきた。
「はい、なんでしょうか?」
「ここではちょっと話しにくから、場所を移してもいいかい?」
「別に良いですが……。」
そして、ハンプトン子爵は周りに誰もいないことを確認するとアベラード卿に話し始めた。
「わしの娘と付き合ってるらしいが、そこで折り入って相談があるんだ。今、娘は部屋に引きこもっているんだ。なんとかして、部屋から出してくれないかな?本当は、こんなことを頼みたくないんだがわしが言っても全然出てきてくれないんだ。」
「えっ!?ちょっ!?まっ!?」
「お願いだ!!よろしく頼むよ!!」
そう言って、ハンプトン子爵は去っていった。
一人ポツーンと取り残されたアベラード卿は、「こんなのってあり??」と呟いた。




アベラード卿は仕事が終わってから、ハンプトン子爵令嬢が部屋から出てくるよう説得しにハンプトン子爵家の元を訪れた。

(俺は何をやってるんだ!本当はハンプトン子爵令嬢と付き合ってないんだよー!!そう言ってやりたい!!だけど、嘘をついたとなると俺の立場が悪くなりそうだなぁ……。やっぱり、黙っておくか……。)

「アリア、アベラード卿も心配して来てくれたぞ。だから、部屋から出てきてくれないか?」
「えっ!?なんでアベラード卿が!?」
「わしがアベラード卿に頼んだんだよ。」
「よっ、余計なことしないでよっ!!!」
「余計なこととはなんだ!!アリアが部屋から出てこないからじゃないか!!」

「「ちょっと待ってくださいーーーー!!!!」」
アベラード卿が叫んだ。
「「二人とも落ち着いてください!!ここはいったん冷静になりましょう!!先ほどお父様から話は聞きました!!エマ殿下に直接会いに行こうとするから門番に追い返されるのです!!謝罪とは交渉する中でも重要です!!手順を間違えてはいけません!!
そして、謝罪する『時』も大事だと私は考えています!
エマ殿下に謝罪するにしても、あまりにも時間が経ちすぎています!
よって、謝罪をするべきではないでしょう!
仮にエマ殿下に謝罪をしたとしても、なんで今更なんだ?と思われ、逆鱗に触れる可能性も考えられます!
……もしくは、本当にエマ殿下に謝罪したいという気持ちがあるのであれば、誠心誠意これでもか!というほど謝り倒すしかないでしょう!なにがなんでも謝ってやるという覚悟があなたにはおありですか?」」

「えっ!?わっ、私はそんな覚悟ありませーん!ごめんなさい!生半可な覚悟でエマ殿下に謝るなんて言ってしまって……。」
「じゃあ、部屋から出てきてくれますか?」
「はい!!出ます!アベラード卿、それにお父様、お母様……みんなに迷惑をかけてしまって、ごめんなさい!」
こうして、ハンプトン子爵令嬢は部屋から出てきた。