「決めた!私、エマ殿下に謝りに行く!」
ハンプトン子爵令嬢は、そう宣言して家を飛び出した。
親は、呆然とアリアの走っていく後ろ姿を眺めていた。




「ハァ!ハァ!すみません!私はアリア・ハンプトンと申します!エマ殿下に会わせてください!ゼェ!ゼェ!」
ハンプトン子爵令嬢は、走ってきたせいで髪も乱れ、汗だくだった。
「ハンプトン子爵令嬢!?」
門番は驚いた!良いところのお嬢様が必死の形相で言うもんだから、呆気にとられてしまった。
「私、エマ殿下に謝りたいんです!!エマ殿下とティム様の関係を引き裂いてしまったことを謝りたいんです!!」
「何を今さら……。今頃になって謝られても、エマ殿下も納得しないと思いますよ。」
「そんなの分からないでしょ!!」
「うーん。エマ殿下も忘れたい過去だと思うので、あなたに会って思い出すとよくないのでエマ殿下のためにはあなたを会わせるわけにはいきません。申し訳ございませんが、お引き取りください。」
「そんな……。」
こうして、ハンプトン子爵令嬢は仕方なくトボトボと家に帰ることになった。
城下町を通っていると、男の子がぶつかってきた。
「「キャッ!」」
「「うわっ!」」
二人は、尻餅をついた。
コロコロと何かが転がった。
それはリンゴだった。
そして、次々に男の子の服の中からリンゴが出てきた。
ハンプトン子爵令嬢が固まっていると、「やっと捕まえたぞ!」と男がやってきて、男の子を殴ろうとした。
「「ちょっと待って!!」」
ハンプトン子爵令嬢がとっさに叫んだ。
男は手を止めると「「こいつはうちの店のリンゴを盗んだんだ!!」」と怒りをあらわにしながら言った。
「私、そのリンゴ買います!だから、この子を許してあげて!!」
周りには人集りができて、どうなるのか見物していた。
「……しょうがねぇ!!今回だけだからな!次やったら、承知しねーからな!!」
男の子は「ごめんなさい。」と謝った。
そして、ハンプトン子爵令嬢が財布を取り出そうとして無いことに気がついた。
「ごめんなさい!私、急いで家を飛び出してきたもので、財布を持ってきてなかったわ!……あっ!?代わりにこのイヤリングをあげます!」
沢山のダイヤがちりばめられたイヤリングだった。
男はそのイヤリングを見て一瞬驚いたが、すぐに受け取ると去っていった。

「なんで僕を助けてくれたの?それに、凄く高そうなイヤリングだったけど良かったの?」
「分からないけど、体が勝手に動いていたの!イヤリングは、まだまだ沢山持ってるからいらないの!じゃあね!」
ハンプトン子爵令嬢はそう言って去った。