「お帰りなさいませ、お嬢様。あら、そちらの方々は?」

「紹介するわ。彼女は、私が昔よく遊んでいた友達よ。町を歩いていたら、たまたま再会したの。久しぶりに色々お喋りしたいから、家に招いたのよ。」

「田中です。急にお邪魔してすいません。」



「それから、こちらの彼とは最近付き合ってるの。タナカさんと家へ向かっていたら彼とバッタリ会って、彼は私をデートに誘うつもりだったの。それだったら、3人で話をしようとなったの。」

「アベラードです。よろしくお願いします。」



「そうでしたか!いらっしゃることが分かっていれば、こちらも色々準備できたのですが、あり合わせの物しかないですがよろしいでしょうか?」

「そんな、全然お構いなく。カ○ピスとかハッピ○タ○ンとか要らないですから。気にしないでください。」

田中さんが応えた。

「??」

メイドは、聞き慣れない言葉に戸惑っていた。



「タナカさん、あれはなんだったの?」

アベラード卿が険しい顔で尋ねた。

「えーと、私のいた世界のお菓子と飲み物ですよ。つい喋っちゃいました(笑)」

「(笑)じゃないでしょ!」



「二人で何をコソコソ喋っているの?」

ハンプトン子爵令嬢が間に入ってきた。

「ああ、気にしないでください。こちらのことなので。」

アベラード卿がごまかす。

「ふーん……。まあいいわ。庭を案内するわ。」

案内された庭はとても美しい、色とりどりの花が咲き誇っていた。

芝生も手入れされており、芝生を踏むのが気が引けるほどだった。

「あそこにいる庭師に手入れをしてもらっているのよ。」

ハンプトン子爵令嬢が指差す方を見ると、顎に長い白髭を生やした老人がいた。

「別に怪しそうな人に見えないよね?」

「そうですね。先ほどのメイドも別に怪しそうではなかったですね。」



次は馬小屋に案内された。

一頭、馬がいた。

馬はキリリとした瞳で賢そうな風貌をしていた。

「お父様の趣味が乗馬で飼ってるのよ。

こちらが、馬の世話をしてくれているリチャードよ。」

「こんにちは。ゆっくりしていってください。あの一件があってから、お嬢様の評判が悪くなり、お嬢様とお付き合いしたい男性が現れなくなったのです。しかし、あなたのような誠実そうな方がお嬢様とお付き合いしていただけるなんて、私、とても嬉しく思います!(T_T)」

「もぉーー!!!リチャード、そのことは言わないでよぉーー!!!!」

「申し訳ありません、お嬢様!ついつい口が滑ってしまいました……。」

馬小屋を出てから、ハンプトン子爵令嬢が二人に謝った。

「さっきは、ごめんなさい。見苦しいところを見せてしまったわね……。」

「いえいえ。」

きっとあの一件とは、ハンプトン子爵令嬢がティム殿下とサンドウィッチ侯爵令嬢の関係を引き裂いて、二人の婚約を破棄させ、ティム殿下を奪って婚約したにも関わらず、今度はハンプトン子爵令嬢がティム殿下との婚約を解消し、別の男性とお付き合いをしたことだろうなと二人は思っていた。