ご飯を食べたあとに、カレンはギャレットにほしいものを買ってもらった。

「本当にこんなもので良かったの?」

「ええ。ほしいものって言われてもあまり思いつかないし、アクセサリーとか服にもそんなに興味が湧かないから、食料品を買ってほしいと思ったのよ。」

「キミって変わってるね。」

「自分でも、変わってるかもしれないって思ってるわ。」

そんなことを2人で喋っていると『ビリッ』っと音がして、リンゴが入った袋が破けてしまった。

リンゴが地面に落ちて、コロコロと転がっていった。

「待ってー!」

リンゴは待ってくれない。

リンゴは建物と建物の間の狭いところに入っていった。

「ふー、やっと捕まえた。」

カレンはリンゴを拾い上げた。

そして、戻ろうとした時に何やら話し声が聞こえてきた。

「なんで失敗したのよ!!」

「申し訳ありません。思ったより、なかなか手強くて……。」

「あなた達にどれだけ報酬をあげたと思ってるの!!」

「次こそは必ず息の根を止めてやります!」



何やら物騒な話をしている人がいるぞ。

カレンは怖いもの見たさで、声のする方まで行ってコッソリと覗いてみた。

男と女が喋っていた。

女には見覚えがあるわ!

「あれってティム様の元婚約者のハンプトン子爵令嬢じゃないの!?」

カレンは、思わず呟いた。

「ふーん。

ティム様がエマ殿下との婚約を破棄してまで他の女性と婚約したが、婚約した後に他に好きな人ができたから婚約解消してほしいとその女性に言われて、婚約解消することになった話は有名だが、あの女性がそうなのかい。」

「ええ。ティム様に会いに宮廷にも来ていたから、覚えているわ……って、ギャレット!?あなたまで、ついてきたの!?」

「カレンがリンゴを取りに行った割には、戻ってくるのが遅いなぁと思ってさ。

それより、なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまった感じだな。」

「私もそう思うわ。ここは気づかれないように一旦帰りましょう。」

ギャレットとカレンは、2人に気づかれないように帰った。