「「待てー!!」」

盗賊が追いかけてくる。

ティムが乗っている馬は、さっきまで馬車を引いていたこともあり、少し走ると疲れてしまい、立ち止まってしまった。

「もうちょっと頑張ってくれよ!!」

馬は、プイッとそっぽを向いた。

もうこれ以上は、走れないと言っているようだった。

このままでは、盗賊に追いつかれて殺されてしまう。

ティムは、馬から降りた。

そして、馬の前足を握った。

そして、もう一度馬に語りかけた。

「お願いだ!!もう少しの辛抱なんだ!!あと少し走ったら宿場にたどり着くから、そこまで頑張って走ってくれないか?」

(えー。嫌だなぁー。もう走れないってば。)

「きみは今、えー。嫌だなぁー。もう走れないってば。って思っただろ?」

(えっ!?なんで分かったんだよ!?)

「私は、この不思議な石の力できみの思っていることが分かるんだ。」

そう言って、ティムはズボンのポケットから石を取り出した。

馬は、不思議そうに石を眺めていた。

「お願いだ!!さっきまで、馬車を引いていたから疲れているのは分かる……だけど、このままでは、盗賊に追いつかれて殺されてしまう!!

この通りだ!!私を助けてくれ!!」

ティムは、馬に頭を下げた。

(しょうがないなー。そこまで頼まれたら、助けないと男がすたるってもんだぜ!

もうひと頑張りするか!!)

「ありがとう!走ってくれるんだな!?」

馬は、コクりと頷いた。

ティムは、馬に股がり再び走り出した。

そして、程なくして宿場にたどり着いた。

「ありがとう!!疲れているのに、頑張って走ってくれて!!」

(良いってことよ!それより、ぐずぐずしてると盗賊も宿場にたどり着くんじゃないのか?)

「そうだな……きみは、宿場の人に預けておくからゆっくり休んでくれ。」

(ふー、やっと休めるぜ。)









「おーい!!隠れてるのは分かってるんだ!!出てこいよー!!」

盗賊の声がする。

「おい!お前ら、王子をどこに隠したんだ!?かくまってるとお前たちも痛い目にあわ……ぐふぅっ!!?」

「てめえ!?一体何を……痛っ!!」

「よくも……痛てぇっ!!」

「辞め……ぐわぁっ!!?」

宿場の人たちは、玉ねぎを盗賊たちに投げつけた。

「目がしみるー!!」

「涙が止まらんー!!」

「顔は辞めろーー!!顔はーー!!」

「目が開けられん!!」

そして、物陰に隠れていたティムがこっそりと盗賊たちの背後に回り、次々と倒していった。









「ありがとうございます!!

みなさんのおかげです!!助かりました!!このご恩は、一生忘れません。」

「いえいえ。とんでもないですじゃ。

ティム殿下を助けることができて、良かったですじゃ。」

「ハハハ。よしてくださいよ。私は、もう王子じゃないんですから。」

「そんなことはありませんじゃ!伯爵家に婿に行ったからといっても、あなた様には王族の血が流れているんですじゃ!

だから、あなた様が望んでいなくても王子に戻る事態になることもあるかもしれませんじゃ。」

「もうー!辞めてくださいよー!!」

「すいませんじゃ。ついつい、冗談が過ぎてしまいましたじゃ。」

「「ハハハハハ。」」

みんなで笑いあった。