結局、動機はザックリ言うと『兄を妬んでいたから』ということだった。

昔から兄が勉強もできて、剣術もできて、身長も高くて、顔も自分より良くて、モテていて気に食わなかったそうだ。

それに、兄というだけで国王になるのも腹立たしかったらしい。

だけど、先に生まれたものが国王になるというのは、そういうシステムなんだから仕方ないだろうと思う……。

悔しかったら、兄より先に生まれてみろ!

いや、それは無理か。



「ふー、なんとか一件落着だな……。」

ティムは晴れて牢屋から出してもらい、ソファーでゆっくりくつろいでいる。

「なぁーにが、

『ふー、なんとか一件落着だな……。』ですか!!」

「カ、カレン!?いたのか??」

「はい。さっきドアをノックして、ちゃんと『失礼いたします。』と伺ってから、部屋に入りましたよ。気づいてなかったんですか!?」

「ぜんっぜん、気づかなかった!!」

「牢屋に入りすぎて、頭もぼーとしてしまったんじゃないですか!?」

「失礼な!!そんなわけないだろう!!

ただ、あまりにも叔父さんの犯行動機がしょうもなくて、あきれてただけだ!!」

「ティム様。ティム様にとってはしょうもないことでも、レオ殿下にとってはたいしたことなのかもしれないですよ。

推理小説を読むと、結構小さなことからほころびが生じ、やがてそれが大きくなり、犯人の犯罪を犯す動機になったりしています。」

「ふーん、そんなものなのか?」

「まあ、それはあくまでも推理小説の話なので、あまり真に受けないでください。」

「でもさー、気づいたんだけど一歩間違えていたら、私が毒の入った方を食べてたんじゃないのか??」

「それが残念なことにレオ殿下は、ちゃんとティム様ではなくて国王陛下の食事に毒を入れる方法を思いつかれていたのですよ。

レオ殿下は、兄が食べ物の好き嫌いが多いのを知っていて、食材が少ない方に毒を入れるように息子のグレゴリーに指示したそうです。

それでグレゴリーはワゴンに置かれた二つのシチューの内、あまり食材が入っていない、つゆだくのシチューに毒を入れたそうです。」

「ふーん、そうだったのか……。

あと気になったんだけど、カレン、遠回しに私の食事に毒が入っていたら良かったのにって言い方じゃなかったか??」

「気のせいですよ。」







国王陛下は、なんとか一命をとりとめた。

国王陛下の温情により、レオ殿下もグレゴリーもペイジも死刑にはならなかった。

しかし、罪を一生をかけて償うことになった。