「「とどめを刺せ!!」」
ルークが叫んだ。
「それはできない。」
ティムは断言した。
「「なぜだ!?」」
「それは君にも家族がいるだろう?」
「「私には、いない。私は孤児なんだ……。だから、私が死んだとしても誰も困らない。恋人もいないし、死んでも誰も辛くない。」」
「「そんなことはない!!私が辛い!!」」
ティムが叫んだ。
「「なぜだ!?」」
「「本来、騎士というのはこんな人を拉致するためにいるわけではない!そんなことをさせられている君を見ていると私も辛くなってくる!
レオルーノの王妃が憎い!!」」
ルークはティムの顔を見てハッとした。
ティムは歯を食いしばって、悔しそうだった。
(何でこんなにも他所の国の王子が自分のことで、悔しがってくれるんだ?……今まで一体誰が私のことで親身になってくれた人がいただろうか?いや、いなかった。)
「……そこまで、自分のことで悔しがってくれてありがとう。嬉しかったよ。
私は、ペリゴール侯爵令嬢を連れてくるという任務に失敗したら、きっと殺される。あなたが私にとどめを刺さないのなら、私は自分で死ぬとしよう。」
そう言って、ルークは刃を自分の方へ向けた。
「「やめろ!!」」
ティムは剣を弾き飛ばした。
カランカラーン。
「「どうして死なせてくれないんだ!!任務に失敗して酷い殺され方をするくらいなら、今ここで死なせてくれ!!!」」
「大丈夫だ。私に案がある。君を死なせたりはしない。」
ティムは懐から不思議な石を取り出した。
「これは不思議な石で、これを身につけて、自分がなりたい人物を思い浮かべるんだ。そうしたら、思い浮かべた人物に変身できるんだ。」
ティムはそう話している間に、ペリゴール侯爵令嬢の姿になっていた。
「「!!!??」」
ルークは驚きで、声が出せなかった。
「あはは(°▽°)ビックリしただろ?これで私がペリゴール侯爵令嬢の姿になって、君が私を連れて帰るんだ。そうしたら、君は殺されずに済むじゃないか!」
「……驚いたよ。こんなことができるなんて……。しかしそれだと、あなたがペリゴール侯爵令嬢の姿になって、カジミール殿下と結婚することになるぞ。」
「「変なこと言わないでくれ!!!!私にはリリーという愛しき妻がいるんだから!!!!作戦があるんだ!!私がペリゴール侯爵令嬢に変身して王子と二人きりになる状況を作る!!そして、元の姿に戻り、王子を説得してペリゴール侯爵令嬢との結婚をあきらめてほしいと頼むんだ!!!」」
「「すっ、凄い!!どこからくるんだ、この自信は?だけど、なんだかいける気がする!!」」
こうして、ルークはティムの話に乗ることにした。