アベラード卿達はというと……。

「もーう、こんな時のために私も乗馬の練習をしておくべきだったわ!!」

ハンプトン子爵令嬢は自分自身へ怒っている。

「まあまあ、落ち着いて。自分を責めても仕方ない。ここはティム様達を信じましょう!!」

アベラード卿がハンプトン子爵令嬢をなだめる。

「……。」

田中さんはずっと下を向いている。

「どうしたの?タナカさん?ずっと静かだけど……?」

ハンプトン子爵令嬢が心配して尋ねた。

「……気分、悪い。」

顔を上げた田中さんは、この世の終わりだというような表情をしていた。

「ちょっ、ちょっと大丈夫!?タナカさん!?」

ハンプトン子爵令嬢は慌てた。

「「馬車を止めてください!!」」

アベラード卿が叫んだ。

そして、田中さんはドアを開けて思いっきり吐いた。

しばらく田中さんの体調が良くなるまで、近くの村で休憩することになった。

「ごめんなさい。迷惑をかけてしまって……。」

「いいのよ、全然。気にしないで。ペリゴール侯爵令嬢はティム様達がきっと連れ戻してくれるはずだから、私達はゆっくり行けばいいのよー。」

「水を飲んだら、少しは気分が良くなるかもしれないよ。」

そう言って、アベラード卿が田中さんに水を渡した。

田中さんは、水をゴクゴクと飲んだ。

「ふぅ……。少し気分が良くなってきました。ありがとうございました。」

「良かった。」

アベラード卿はほっとした。

「タナカさんは、ペリゴール侯爵令嬢がいなくなってからずっと探し回って、休んでないから疲れが溜まっていたのよ。」

ハンプトン子爵令嬢が言う通り、田中さんは必死になってペリゴール侯爵令嬢を探していた。

ハンプトン子爵令嬢は田中さんの手を握り、「ティム様達を信じましょう。」と言った。