「アベラード卿の兄がダラムで四日前にペリゴール侯爵令嬢を見たと言っていたから、今頃はプロヴリー辺りだろうか?」
「その計算だとペリゴール侯爵令嬢がレオルーノへ着くのは、一ヶ月以上はかかりますね。」
「そうだな。とりあえず、早く出発しよう!!」
「はい!!」
ティムとエズフはペリゴール侯爵令嬢を助けるために出発した。




その頃、ペリゴール侯爵令嬢はプロヴリーという町で食べ歩きしていた。
「そんなに食べて大丈夫なのですか?」
「大丈夫よ♪この串焼き美味しいー♪」
ペリゴール侯爵令嬢はあきらめの境地に入っていた。
最初はなんとか逃げ出そうと色々試してみたが、全て失敗に終わった。
なので、カジミールと結婚したくないが腹をくくるしかないと思い、最後の晩餐かのごとく好き放題食べていた。
ペリゴール侯爵令嬢は思い返せば自分を騙し騙し生きてきた。
自分というものがなく、家族のために自分の身を削って生きてきた。
いつからか分からないが、自分の心がどこか遥か彼方へと消えてしまった。
これを取り戻すのは、難しいだろう。
カジミールがベンタット子爵令嬢を信用し、婚約破棄を言い渡されてショックだったが、ハンプトン子爵令嬢と出会い、田中さん、アベラード卿と出会い、自由を知り、生きる希望を知った。
世の中捨てたものじゃないと思い始めていた。
そんな矢先にレオルーノへ連れ戻されるなんて、この悲劇からは逃れられない運命なのだとあきらめた。
だから、子供の頃に『お子様ランチ』なんて子供じみたものを食べてはいけませんと親に言われ、食べさせてもらえなかったから、お店の人にどうしても食べたいと頼んで、『お子様ランチ』を食べた。
レオルーノへ連れ戻されるんだと思いながら食べる『お子様ランチ』は、とても子供の頃に夢見ていた味とは違った。