「……で、どうしてそれが変身できることへ繋がるんだい?」
アベラード卿はマガリーヌ伯爵令嬢から話を聞き終えて、そう返した。
「これよ。」
マガリーヌ伯爵令嬢はおもむろにポケットから石を取り出した。
「??なんだい?それは?」
「今話したじゃない!お祖父様が色んな珍しい物を収集している部屋に忍び込んだって!それで、お祖父様にバレて怒られて逃げたでしょ?その時にこの石を持ったまま逃げたのよ。」
「……で?」
「だから、私はたまたま逃げ出した時に持っていたこの石のおかげで変身できたのよ!!」
「「…………………マジ!?」」
「マジよ!!!」
「すまん!俺は頭が固いみたいで理解に追いつけないみたいだ。」
「まあ、すぐに理解できる方がおかしいわ。」




一旦休憩することにした。
そして、今度はハンプトン子爵令嬢と田中さんも呼んで話を聞くことにした。
「だから、まあ、ということは、つまり……この石を持っていると変身できるということだな。」
アベラード卿がやっと理解した。
「それでは、この石はいわゆる不思議な石というやつですね。」
田中さんはすんなり受け入れた。
(ふーん、これがコーニエルさんが言っていた不思議な石のことね。)
ハンプトン子爵令嬢はコーニエルから聞いた話を思い出していた。
「だが、不思議な石というのはいくつもあるものなのか?それにティム様が持っていた石は握手した相手の考えていることが分かるものだっただろ?」
アベラード卿は田中さんとハンプトン子爵令嬢にコッソリ尋ねた。
「魔法のエネルギーを石に送り込んでそのエネルギーが入った石を持っている間だけ、魔法が使えない人でも不思議な力を得られるものだと本で読みました。だから、魔術師は一人二人ではないんですから、いくつもあってもおかしくないと思いますよ。」
「だけど、そんなに不思議な石はないはずよ。コーニエルさんが不思議な石は一万個に一個の確率で創れると言っていたから、物凄く珍しい石よ。それから、不思議な石なんだから、握手した相手の考えていることが分かる石以外にも変身ができる石があっても不思議じゃないわよ。不思議な石(・・・・・)なんだから。」
「それもそうだな。」
アベラード卿は考えることを放棄した。