「あの……、みんなに聞いてほしいことがあるの!」

ハンプトン子爵令嬢は、なにか覚悟を決めたような顔で言い出した。

「一体どうしたの?」

田中さんが尋ねる。

「信じてもらえないかもしれないけど、私はさっき学園での生活が辛かったって言ったけど、それはエマ殿下に苛められていたことも理由の一つなのよ……。」

「それは本当のことなのか?」

アベラード卿が聞き返した。

「本当よ。」

「エマ殿下が苛めをしていたというのは、君がウソを言っているんだと当時は思っていたよ……。」

「それはウソじゃないの!!」

「それはって、どういうこと?」

「えーと……正直に言うと、ティム様と一緒に居ても面白くなくて退屈だとか言ったことがウソなのよ!!本当は楽しくて、面白かったの!!だけど、王妃教育がスッゴく大変で着いていけなくて、それを言うのが恥ずかしかったの!!王妃教育から逃げたってみんなから思われるのが嫌だったの!!だから、ティム様のせいにしてしまえって考えて、あんなこと言ってしまったの……。」

「……浅はかな考えだね。」

「今は、いけないことをしてしまったって気づいたわ。」

「遅すぎるよ……。」



「終わったことを言っても仕方ないわ……。」

田中さんが言った。

「それにエマ殿下の評判は良いわよ。私の周りの人達は、エマ殿下は優しくて良い人だって言っているわ。まさかエマ殿下が本当に苛めをしていたなんて……。」

「私もエマ殿下は優しくて良い人だと思ってたの。だから、苛められた時は本当にビックリしたわ!!」

「なんだか他人事みたいな言い方だな……。」

アベラード卿が言った。

「だって、エマ殿下が私の足を踏んできたり、体当たりしてきたり、腕をつねってきたり、バカとかアホとか言ってきたりしたのよ。そんな幼稚なことする人に見えないから、これは夢なんじゃないか?って思ったぐらいだったのよ。だから、実感がわかないのよ……。」

「私もエマ殿下にお会いしたことがあるけど、そんな苛めをする人に見えなかったぞ……。」

「じゃあ、誰かがエマ殿下になりすましたとか?」

田中さんが言った。