晩餐会が始まった。

ティムは今、緊張している。

晩餐会が始まる前にも、なにか抜けてるところはないか何回もチェックしたが、それでもソワソワしてしまう。

もし、ミスをしたらどうしようと考えてしまう。

「ティム様、どうかされましたか？」

メイドのカレンが心配して声をかけてくれた。

「いや、大丈夫なんだ。ありがとう。」

「そうですか。それなら、良いのですがティム様の顔色があまり優れない様子なので…。」

「そうか。全く気づかなかったよ。自分のことなのに…。」

「もし、ご無理をなされているのなら少しお休みになられた方が良いのでは？

なにかあったら、ティム様をお呼びしますので、それまでお休みになられた方が良いと思いますよ。」

カレンに任せるのは悪いと思ったが、カレンにずっと体調を心配され続けるのも嫌なので結局、ティムは仮眠室で休ませてもらうことにした。





ティムは今、一人で仮眠室に向かっている。

ふと、窓からワンワン民族の子供が見えた。

しかし、泣いているように見える。

放っておくこともできず、その子のところまで来た。

「どうしたの？なんで泣いてるの？」

「………。」

尋ねてみたが、返事が返ってこない。

「あっ！ごめん、ごめん。言葉が分からないよね。」

余計に困った顔をされた。

あっ！そうだ！

ティムは思いついて、変顔をした。

すると、その子は吹き出した。

警戒心がとれたみたいだ。

その子が少し考えてから指を指した。

指した方を見たら、木にボールが引っ掛かっている。

多分、ボールで遊んでいる時に、たまたま運悪く木にボールが引っ掛かってしまったのだろう。

取ってあげたいが、手で伸ばしても届かない。

なにか長い棒があれば取れそうなのだが、あいにく辺りには、そのようなものは落ちてない。

木に体当たりして揺らせば、ボールが落ちてくるかもしれないが私の体調が優れないので無理をするのは、辞めておこう。

うーん…。

どうすればいいのだろう？

悩んだ末に思いついたのが、その子を肩車してボールを取らすことだった。

ティムはしゃがみこみ、自分の肩を指差して乗るようにジェスチャーした。

その子にもティムの言いたいことが伝わったようで、おずおずとティムの肩に乗っかった。

ティムは、その子の足をしっかりと掴み、落とさないようにゆっくりと立ち上がった。

そして、その子は手を伸ばしボールを取ることができた。

凄く喜んでいた。

ティムもその子の喜んでいる姿を見ると嬉しくなった。

「良かったね。次は、木に引っ掛からないように気をつけて遊ぶんだぞ。」

その子は、ティムの言葉が分からないのでポカーンとして頭だけ下げた。



結局、ほとんど仮眠室で休むことができずに終わった。