RAGの東京コンサートは、大成功に幕を閉じた。

 ぎゅうちゃんは歌詞を間違えることも、振り付けを忘れることもなく、むしろ今までで一番と言っていいほどのパフォーマンスでファンたちを湧かせた。キラキラと輝くぎゅうちゃんは紛れもなくみんなから愛されるスターで、そしてわたしたちファンの夢だった。
 ファンの情報網というのはすごいもので、どこからか情報は流れてくる。彼が母親を病気で亡くしたことは、コンサート当日にはほとんどのファンが知っていた。ぎゅうちゃんはその事についてはコンサート中、もちろん一度も口にしなかったし、ファンだっていつもと変わらず彼らのステージに熱狂した。それでもやっぱり、いつもとは違う。プロとして自分の役割を全うする彼の姿にたくさんのファンは涙を流し、わたしは俯瞰するような気持ちでその光景を見ていたのだ。
 今までのわたしだったら号泣していたと思う。こんなに無理をしてステージに立たなくていいのにって。だけどありがとう、ごめんねって、きっと泣いていたと思う。だけど今日はそういう想いが生まれなかった。それよりも、プロとしてやりきった姿にほっとする気持ちの方が大きかったのだ。無理をして笑わなくていいし歌や振りを間違えてもいい。そんなことをわたしは言ったけれど、本当は信じていたのだと思う。プロとして、仕事として、アイドルとしてぎゅうちゃんがコンサートをやりきってくれることを。
 そんな自分の中の変化に戸惑いつつ、隣で息を詰まらせながら泣くユーミンの背中をさすりながら、わたしはぎゅうちゃん一人をずっとずっと見つめていた。