「ユウキ……? そっか、帰ったんだ……」

 翌朝目を覚ますと、ベッドにはわたしひとり。時計を見れば九時を過ぎている。どうやら眠っている間に彼は家を出ていったらしい。
 昨日一日有休がとれただけで、今日は出勤だったというのはテーブルの上の置手紙を見て分かったこと。きっと始発の新幹線でそのまま仕事に向かったのだろう。まったく、こういうことは昨日のうちに言っておいてほしいものだ。だけどまあ、ユウキらしいっちゃユウキらしいけど。

 忙しい彼に対し今日がオフのわたしは、どさりとソファに腰を下ろすとリモコンを操作する。昨日録画しておいた音楽番組を見なければいけない。ぎゅうちゃんはどんな衣装を着ていたんだろう。
 そうして再生ボタンを押したところで、すぐに異変に気付いた。

「こんばんは! RAGでーす!」

 大きく手を振るアキラくんと亮輔くん。そこにぎゅうちゃんの姿がない。

 これは昨日の生放送。今まで一度だってぎゅうちゃんが番組やコンサートで不在だったことはない。

 ――何かあったのだろうか。

 半分眠っていた脳が一気に覚醒し、様々な憶測が頭をよぎる。ぞわぞわと肌が粟立つのを感じ、わたしは大きく身震いをした。

「今日はぎゅうがスケジュールの都合で出演できないのですが、ふたりでもしっかり魅せますんでご心配なく!」

 画面の中のアキラくんは、いつものキラキラスマイルを見せている。しかし感情が素直に表に出てしまう亮輔くんの表情は、無理やり笑顔を作っているようにも見えた。

 ぎゅうちゃんに何があったの――?

 わたしは慌てて、どこに置いたのかも忘れてしまったスマホを探す。昨日は家に帰ってきてから一度もスマホを見ていない。帰ってきてからどこに置いたんだっけ。
 布団をばさりと引き上げてみてもその姿は見当たらない。焦れば焦るほどに探し物は見つからなくて、わたしの心臓はどくどくと嫌な音を大きくしていく。

 ああ、どこだっけ。鞄の中にもないし、どこだっけ。

 マナーモードにしていたのかどうかすら思い出せない。部屋中を歩き回りながら、テレビから流れてくるRAG新曲を――ぎゅうちゃんのパートを他のふたりが歌っているそれを――、ただ耳の鼓膜だけがキャッチしていた。