「それで? 無事にマチルダになれたわけ?」
「うん、マチルダ。これはどう見てもマチルダ。紛うことなきマチルダ」
「やっだ、アンタ今度のコンサートでぎゅうちゃんから見初められちゃうかもしれないよ!?」
「……ある。大いにあり得る……。そしたらわたし、結婚する! ぎゅうちゃんの嫁になる!」
「ヨッ! ぎゅうの嫁!」

 鏡の前で服を選びながらスピーカーモードにしてある携帯に向かって「ウフフ」とさぞかし気持ち悪かろう返事を返す。
 電話の相手はわたしの唯一無二の友人、ユーミンだ。

「ねえ、今日連れていってくれるユーミンのお友達って何してるひとなの?」

 とある土曜日の午後6時45分。カレンダー通りのおやすみであるわたしたちは今夜、彼女の友人であるという人物に、とある場所へ連れていってもらうことになっている。

「さあ? なんかよく分かんない。会社いくつか経営してるって言ってたけど。この間さ、映画館で偶然隣の席になった人なのよ」
「えー!? それセーフティなわけ!?」
「大丈夫っしょ、名刺もカッコイイ感じでいい人だったし。それよりおしゃれして来なよ? もしかしたらぎゅーちゃんに会えるかもしれないんだから!」
「……それはまずい……パーティドレス着てくべき?」
「アンタって本当に……。もうっ、ウェディングドレスに決まってんでしょ!!!!」

 ケラケラと笑うわたしたち。夢見がちもいいところな会話に見えるかもしれないけれど、これはわたしたちの通常の会話だ。

 ユーミンとわたしは、気心が知れた友人同士。そんなわたしたちは、アイドルグループRAG(ラグ)のファン──それも重度な──なのである。