井上 美香(いのうえ みか)は自らの意思で、放課後の教室に足を運んだ。





最近では自身のクラスである3-Bに入ることさえも美香にとっては苦痛であった。





その苦痛を取り除きたいがために、藁にも縋るような思いで《あること》に頼ったのだ。





美香が教室に入るともうすでに先約がいた。





「きみが井上美香さん?」





その声に抑揚はない。教卓の椅子に腰かけた男子生徒がひとり。




男子生徒は面倒そうに顔を横に向け、セーラー服姿の女子生徒にぶつぶつと何か呟く。






美香は男子生徒を見つめ、少し気味悪がりながらも口を開いた。







「井上だけど、わざわざ確認しなくても 悠木(ゆうき)くん同じクラスじゃん」





訝し気な美香を気にも留めずに、悠木 晴臣 (ゆうき はるおみ)は言葉を返す。