お昼休み、教室で。


「驚いたよねぇ、高瀬クンが美化委員会に立候補するなんてさぁ」



 お弁当を食べながら言う真希ちゃんに、私はため息をつきながら頷いた。


「………ホント。でもヤだなぁ。私、高瀬くんって、なんだか苦手」



「えっ、なに言ってんのよ沙耶(さや)ってば。クラスの女子がどんだけ羨ましがってんのか、あんた知らないの?」



「羨ましい?」



「そうだよー。だって高瀬クン、背高いし、顔もカッコいいしぃ」



「じゃあ代わってあげるよ、真希ちゃん。美化委員会」



「あ~、それは……はは。ごめん、遠慮しておく。委員会になんて入ったら秀敏くんと帰れないもーん」


「なによ。彼氏いるのに高瀬くんがカッコいいとか、よくそんなこと言えるね」



 秀敏くん、というのは隣のクラスの真希ちゃんの彼氏だ。


「ふふ。沙耶ったら真面目なんだからー。彼氏がいてもね、目の保養はね、女子には常に必要不可欠なノダよ。でも美化委員会はちょっとねぇ」


 エヘヘ、と苦笑する真希ちゃんに私は言った。



「委員会の中でも風紀と一緒にワースト1、2位を争うほどだもんね」



「だって美化委員会って活動多すぎだし。それにほら、適性もあると思うし 。沙耶ってホント、いつも偉いと思うよ~。今年も過酷な美化委員会を続けるなんて。頭がさがります!本当に!」


 私が怒っているとでも思ったのか、真剣に訴える真希ちゃんが、なんだか可笑しくて。



「私は好きだから。お掃除とか」



 笑って言ったけど、チクリと胸が痛んだ。



 半分本当、でも半分は違う。




 美化委員会を続けられたのは斎藤くんと一緒だったから。