それからまたいつもの日常が戻った。

私は相変わらずのルーチン業務で、彼は外にも出るようになって顧客管理をするようになっていた。

仕事以外ではたまにご飯を食べに行って美味しいもの巡りをする関係のままだった。

あれから彼は私の手料理を望まなかった。

ただ彼は何度も私に好意を伝えてくれた。

彼の望むことが出来ない私を愛してくれるその優しさが逆に心痛かった。

私は彼に気持ちを返してあげたいと願い、台所に立って料理を作ろうとした。

だがただ立っているだけで、手はちっとも動かなかった。

震えるばかりで料理なんて作れもしなかった。

それがあまりに情けなくて、悲しくて、私はその場にしゃがみこみ、声を押し殺して泣いた。

彼についていって食べるご飯はどれも美味しかった。

たまに二人で探して失敗してもそれはそれで楽しかった。

こんなにも幸せをくれる彼のために、料理を作りたいのに身体が拒絶するばかりであった。

母がいなくなってから、私のご飯はコンビニやスーパーのお惣菜になった。

冷めた料理を口にしていると、幸せの味が思い出せなくなっていた。

たまに自分で料理を作ってもおいしくなかった。

こんな美味しくないご飯を無理に作って、彼に食べさせて、それで失望させるのも怖かった。