それから私たちはひっそりとお付き合いをはじめた。

お休みの日は二人で出かけ、その度に彼から出される課題をクリアしていった。

そうして私が恥ずかしがらず手を繋げるようになったころ、私と彼は新幹線に乗って一泊二日の旅行をすることになった。

その旅行先は、私の生まれ故郷であった。


どこへ行くのかは彼と待ち合わせをするその日まで秘密にされていた。

おそらく彼の意図しての行動だろう。


逃げることの出来ない当日、私は手を握りしめて下を向き、新幹線に乗っていた。

彼の顔を見ることは出来なかった。

もう何年も帰っていない。

あの場所は私を締め付け、苦しまされ、悲しい想いをさせてくる。

誰かに指を刺されるほど世界は狭く、上を向いて歩くことが難しかった。

俯いてばかりの私の手に、そっと彼の手が重なる。

それでも私は顔をあげられなかった。


「……怖い?」

「……うん」

「ごめん。でも奈央さんの育った場所を見てみたかった」

「……何もないよ」

「うん。それでも、見たかった」


私は彼を見ないのに、彼は真っ直ぐだった。

重なるやさしい温もりがやけに痛かった。

心をぐちゃぐちゃにかき回されている。

息が詰まる。

私は結局、一度も彼を見ることなくずっと俯いていたのであった。