観察してたのは本当だから、私は悪びれずに言った。

「……そんな咄嗟に撮影出来るはず無い」
「雪香が居なくなってから、私も用心してるの」

 嘘を見抜かれそうになり、焦る気持ちを抑えながら言うと、ミドリは信じたようで険しい表情になった。

「どうすればいいんだ?」

 ミドリは諦めた様に言う。秋穂を警察に突き出されたくなければ、私に従うしかないと悟ったようだった。

「私が今から聞くことに、正直に答えて……誤魔化してると思ったら、警察に行くから」

 二人を睨みながらそう言うと、ミドリは渋々ながら頷いた。
 頭の中で、素早く考えをまとめる。

「まず……手紙についてだけど、ミドリが出したって言ってたのは嘘? 最初からこの人が出していたの?」

 私は秋穂にチラッと視線を向ける。秋穂は何も知らない様で、困惑の表情を浮かべている。

「そうだよ、沙雪の言う通りだ」
「自分がやったと嘘をついたのは、この人を庇う為?」
「……そうだ、鷺森蓮が会わせたい女性がいると接触して来た時、沙雪だろうと予想した。雪香が消えたのは知っていたからね。もし秋穂の手紙について問われたら誤魔化すつもりでいた。秋穂にはもうやらないよう約束させて、今までのは俺の仕業にした」

 ミドリは観念したのか、誤魔化す事なく私の言葉を肯定していく。

「じゃあ、雪香が持っていた手紙は? この人には雪香だと教えて無いのにどうして出せたの?」

 ミドリは秋穂の様子を気にしていた。彼女には、聞かれたく無いのだろう。
 彼の心情に気付きながらも、私は質問を取り下げはしなかった。
 ミドリは苦痛そうに顔をしかめてながら口を開いた。

「雪香の持っていた手紙は、秋穂が今日の様に沙雪に宛てた物だ」
「……は?!」

 何を言っているのだろう。

「薫君?」

 秋穂もミドリに詰め寄った。

「秋穂が嫌がらせの手紙を出していたのを兄は知っていたんだ……だから秋穂が沙雪の郵便受けに手紙を入れた後、回収していた。家に持って帰れないから雪香に預けたんだろう」
「嘘!! そんなのって……徹は知っていながら私の行動を黙って見ていたの?」

 興奮した様子の秋穂に続いて、私も疑問を口にした。

「話は分かったけど、そんな都合良く回収出来るものなの? 一年中私のアパートを見張るなんて無理でしょ? 全て回収出来る訳無いと思うけど」