昨日宇田川駅で記憶を取り戻したあと、次の場所に木暮南中学校の校門が示され、私たち四人はこの夏三度目の母校訪問をすることになった。

 透矢たちはわざわざ私を駅まで迎えに来てくれて、四人で一緒に学校に向かった。道の途中、透矢の足がコンビニの前で止まる。

「すぐ戻るから、ちょっと待ってて」

 透矢は私たちを外に残し、素早く買い物を済ませて戻ってきた。コンビニで買ったアイスを、私と理香と秋人にひとつずつ配っていく。

「はい、みんなの分」

「ありがとう」

 パッケージを見れば、中学の頃によくみんなで食べたソーダ味のアイスキャンディーだった。

「うわぁ、懐かしい」

「だろ? そういえば最近全然食べてなかったなぁと思って」

 私たちはコンビニの隅に移動し、袋を開けてアイスにかじりついた。乾いた口の中に懐かしくて爽快な味が弾ける。

「やっぱこのアイスが一番おいしいね」

 私の言葉に、三人は「そうだね」としみじみとした表情で言った。

 なんとなく空を見上げると、透矢たちもシャリシャリ音を立ててアイスを噛みながら、同じように顔を上げた。四人の視線の先に広がる空は、手の中のソーダアイスと同じ色をしている。

 こうしていると、学校の帰り道によく買い食いをした中学の頃を思い出す。あの頃も、夏はこうやってみんなで肩を並べてアイスを食べ、冬になるとホカホカの肉まんを食べた。違うのは、あのときの私たちはいつも五人だったということ。

 透矢はアイスを片手に、中学のときの思い出話を笑いながら話し出した。もともと明るくて陽気な性格だけど、涙もろい一面もあった。自分の気持ちに素直で、悲しいときや悔しいときは、小さな子どものようにあたりを憚らず泣く人間だった。

 だけど私は、半年ぶりに透矢に再会してから、まだ一度も彼の涙を見ていない。悲しいときに笑えるような器用な人ではなかったはずなのに。

 アイスを食べ終わったあと、私たちは燦々と照りつける陽射しの下を歩いて中学にやってきた。アスファルトが真夏の太陽光を吸収し、サンダル越しに足の裏を火傷してしまいそうなくらい熱い。

 校門を入ろうとしたとき、透矢が「あれ?」と声を上げた。

「どうしたの?」

「ここ……」

 透矢の指が、校門の脇に植えられた桜の木を差した。幹の部分がキラキラしている。

「それってまさか……」

 近づいてみると、『S』の形をした光が輝いていた。心臓がドクンとひとつ、大きな脈を打つ。

 私は深く息を吸い、みんなと目でうなずき合った。ゆっくりと手を伸ばす。

 木の幹に触れた瞬間、ぱっと光がほとばしり、周囲の景色を金色に染めながら私たちの身体を呑み込んでいった。