それからも毎日、二人の交流は続いた。
初めの数日はそう長居せずに帰っていた由菜だったが、次第に取り留めのない話もしつつ長い時間を一緒に過ごすようになった。
琥珀も琥珀で、由菜へ心を許すようになっていった自分に気がつく。
「……それでね、その子をかばったら無視されるようになっちゃったんだよね」
今日の由菜は、質問に答えた後、高校での話をした。
虐げられていた友人をかばったため、逆に自分が虐げられるようになったとのことだ。
「今日だって『偽善者ウザイ』って書かれた手紙が靴箱に入ってたし……
あーあ、女の子って怖いなあ。もう十七なんだし、大人になれっての」
「偽善者?由菜は正しい行いをしたのだ。非難される覚えもなければ恥じる必要もない」
由菜は良くも悪くも素直な少女だ。
それはここ数日でよく分かった。
「えへへ……琥珀にそう言ってもらえるとちょっと安心するなあ」
「しかし辛いだろう?友人だと思っていた者に裏切られるというのは」
「まあね。辛くないって言えば嘘になるわ。でも、きっとあの子をあのまま放っておく方が辛かったから」
彼女は強気な笑顔を琥珀に向ける。
とても眩しい笑顔だ。
「そうか。強いな、お主は」
唄姫は由菜と同じような強い目をしていたが、このような笑顔を浮かべることはなかった。
姫の強さは恐らく、自分の運命を受け入れようとしているが故の強さだ。
対して、由菜の強さは自分で現状を変えようという意志の強さ。
同じ強さでも、全く違うものだと思う。