大学の後期授業が始まって2日目に、俺はカフェテリアで偶然に奈未と顔を合わせた。

無視したり気づかなかったふりをしてすれ違うには近すぎる距離で目が合って、ふたり同時に立ち止まる。

そしてお互い気まずそうに、重なった視線を微妙に逸らした。

ここはとりあえず、俺が謝ったほうがいいよな。

そう思いながら奈未にどう声をかけようか迷っていると、彼女のほうが先に口を開いた。


「夏休み……何してた?」

上目遣いに俺を見上げながら、奈未が恐る恐るといった感じで話しかけてくる。

ちょっと不安げな奈未の声。

絶対に1ヶ月以上も何の連絡しなかったことを責められると思っていたから、彼女の口から溢れた第一声に拍子抜けした。


「え、夏休み?」

「そう、夏休み」

「ほとんどバイトで、それ以外はだいたい家で暇してたけど……」

「本当に?」

「うん、それがどうした?」

「別に。それならいいの」