「今、図書館にいるんです」
江麻先生からの電話を受け取ったのは、みんなで海に行った2日後のことだった。
「よかったら、これから一緒にお昼でもどうでしょう?」
ついでにそんな誘いを受けた俺は、ほんの少しだけ心を踊らせながら川原沿いの道を図書館に向かって自転車を走らせる。
ネコのキャラクターのついたバッグを肩からさげた朔が、午前中にどこかに出かけて行った。
珍しいな、と思っていたら、昼メシの時間が近づいても帰ってこない。
少し心配していたが、朔は海に行った日の帰り道に江麻先生と図書館で会う約束をしていたらしい。
図書館に着くと、入り口の前に立っていた江麻先生が俺に気づいて手を振ってくれた。
「こんにちは。急にお呼びしてすいません」
「いえ。こちらこそ忙しいのにすいません。朔、何も言わないから」
俺は江麻先生に軽く頭をさげるとあたりを見回した。
「えっと、朔は?」