母親の病院に連れて行ってやってから、俺とチビとの関係は微妙に変わったようでやっぱり変わっていなかった。

同じ空間にいても、お互いほとんど干渉しない。

だけど、俺がたまにチビに話しかけたときの彼女の反応は前と少し変わった。

前は巣穴から敵の様子を窺うウサギみたいに不安げな目で俺を見上げていたチビが、真っ直ぐに俺を見るようになった。

俺を見る真ん丸い大きな目からは、以前のようにおどおどした雰囲気は感じられない。

チビの本音はよくわからないけれど、ちょっとは俺のことを信頼してる。

チビの目から、俺は勝手にそんなことを感じ取っていた。


だから、チビを母親の病院に連れて行ってから一週間後。

チビが夕方になっても家に帰って来なかったとき、俺はなんだか妙な虚脱感を覚えた。

いつもの帰宅時間を過ぎても帰ってくる気配のないチビに対して、イライラが募る。

携帯で何度も時間を確認しては、部屋から玄関までの短い廊下を忙しなく何度も往復した。

チビが俺のことをちょっとは信頼してる。

それは俺の勘違いだったんだろうか。

そう考えるといても立ってもいられなくなって、俺は玄関を飛び出していた。